おはよう、後輩A君。
7月に10回続けた勉強会の最終回を迎える話を書いたよね。あれから1ヶ月経ったんだ。
今日はその後の話をするね。うまくいった話ではないよ。でも、書いておきたいことがあるんだ。
1. 準備は、できる限りやったんだよ
最終回に向けて、私はこういう用意をしたんだ。
・参加しやすいように2つの日程を用意した
・来られない人のために録画を残した
・あとから追えるように復習資料を作った
・当日その場で動かせるように題材を用意した
題材は「集中豪雨アラートの報告を、半分自動にする」というものだったよ。毎回手作業でやっている確認を、AIに肩代わりさせるという内容だね。
なぜここまでやったかというと、「できない理由」を全部つぶしたかったんだ。時間が合わない、聞き逃した、あとで見返せない――そういう壁を、先に取り除いておきたかったんだよね。
壁がなくなれば、人は動くと思っていたんだ。
2. でも、反応はほとんどなかったんだよ
ここからは事実だけを書くね。
最終回の告知を出したんだ。返信はゼロだった。
内容を書いたアジェンダも出したよ。これにも反応はなかった。
当日が近づいても参加表明はなくてね。「片方の日程は中止して、もう片方に絞ります」と伝えたんだ。そうしたら数名から「参加します」と返事が来たよ。
当日は、用意した題材を各自で動かしてもらったよ。最後まで自分で進められた人もいたし、途中で手が止まった人もいたんだ。
手が止まったところは、その場で一緒に見ていったんだ。そうしたら「そんなに簡単なんですね」と驚いてくれてね。あの反応は嬉しかったんだよ。
でも全体としては、静かな終わり方だったね。「次もやりたい」という声は、ひとつも出なかったんだ。
正直に言うと、少しこたえたよ。10回ぶんの準備を思い出すとね。
3. 「馬を水飲み場に連れて行く」の話
こういう言葉があるよね。
馬を水飲み場に連れて行くことはできる。
でも、水を飲ませることはできない。
最終回のあと、この言葉が何度も頭に浮かんだんだ。
私がやったのは水飲み場まで連れて行くことだったんだよね。日程を2つ用意して、録画を残して、資料を作って、題材まで置いた。水はすぐそこにある状態にしたんだ。
でも、飲むかどうかは私の側にはないんだよ。
――ここまでは、たぶん誰でも知っている話だよね。私も言葉としては知っていたんだ。
大事なのはこの続きなんだよ。
4. 飲ませられないと分かると、手放せるものがあるんだよ
私がこの1ヶ月で気づいたのは、こういうことなんだ。
「水を飲ませられない」と本当に理解すると、やらなくていいことが決まるんだよ。
準備をしていたころの私は、無意識にこう考えていたんだ。
反応がないのは、まだ足りないからだ。
もっと分かりやすくすれば。もっと参加しやすくすれば。
きっとどこかに、正解の届け方があるはずだ。
この考え方って、終わりがないんだよね。相手が動かない限り、ずっと「まだ足りない」ことになるからね。
だから疲れるんだ。準備が終わらないし、終わっても報われた気がしないんだよ。
でも「水を飲ませることはできない」を本当に受け入れると、境目がはっきりするんだ。
私の仕事 → 水飲み場まで連れて行くこと
私の仕事ではない → 飲ませること
ここが分かれると、「連れて行けたなら、それで終わり」と言えるようになるんだよ。飲まなかったことを自分の失敗として数えなくてよくなるんだ。
これ、思っているより大きいことだと思うんだよね。
5. 誰も悪くないんだよ
念のため書いておくね。
参加した人たちを責める気持ちは、ひとつもないんだ。
みんな自分の仕事で手一杯なんだよね。私だってそうだよ。「やった方がいい」と分かっていても、今じゃないことはたくさんあるんだ。それは前に「今はやらないと決めた話」でも書いたとおりだね。
参加しなかった人たちにも、それぞれの事情があったんだと思うよ。
それに――あの日「そんなに簡単なんですね」という声が出たんだ。あの瞬間、確かに水は飲まれたんだよね。全員が飲まなくても、飲む人はいるんだ。
だから、これは失敗の話じゃないんだ。思っていたのと違っただけなんだよ。
6. やってよかったことは、はっきりあるんだよ
10回ぶんを振り返って、確実に残ったものを書いておくね。
ひとつ目は、自分の理解が深まったことだよ。人に説明するために、私は何度も調べ直したんだ。教えるのは、いちばん濃い勉強だったね。
ふたつ目は、教材が残ったことだよ。録画も資料も、そのまま残っているんだ。誰かが「見たい」と言えば、すぐ渡せる状態だよ。
みっつ目は、外に出る勇気がついたことだね。実は同じころ、社外の場でも同じような会をやってみたんだ。そちらでは参加した人から後日、自分から質問が届いたんだよ。「これができないんですが、どうすれば」ってね。
同じ内容でも、受け取る人が変われば反応も変わるんだ。これは大きな発見だったよ。
――もし社内だけで完結していたら、私は「自分の教え方が悪いんだ」で終わっていたと思うんだよね。
7. ドアは開けたままにしてあるんだよ
最後に、いまの状態を書いておくね。
勉強会そのものは終わりにしたんだ。でも「分からないことがあったら聞いてね」とは伝えてあるんだよ。
これは矛盾していないんだ。連れて行くのはやめたけれど、水飲み場は閉めていないということだからね。
誰かが自分から来たときには、いつでも案内するよ。でももう連れに行かないんだ。
――この線を引けたことが、10回の中でいちばんの収穫だったかもしれないね。
結論:連れて行けたなら、それで十分だよ
今日の話をまとめるとこうだよ。
① 参加の壁を全部つぶす準備をした
② それでも反応はほとんどなかった
③ 馬を水飲み場に連れて行くことはできても、飲ませることはできない
④ でも大事なのは続き。飲ませられないと分かると、やらなくていいことが決まる
⑤ 「まだ足りない」の無限ループから降りられる
⑥ 全員が飲まなくても、飲む人はいる
⑦ 連れに行くのはやめたけれど、水飲み場は閉めていない
後輩A君も、いつか誰かに何かを教える立場になると思うんだ。そのとき、たぶん同じことが起きるよ。用意したのに、来ないんだ。
そういうとき、自分を責めないでほしいんだよね。用意することと、使ってもらうことは、別の仕事なんだ。前者はこちらの担当だけれど、後者は相手の担当なんだよ。
そして――連れて行けたなら、それで十分なんだ。
水を飲んだかどうかは、その人が決めることだからね。
よくある質問
Q1. もう勉強会はやらないの?
同じ形ではやらないよ。ただ聞かれたら答えるし、必要とされる場があれば出ていくつもりだよ。やめたのは「連れて行くこと」であって、「教えること」ではないんだ。ここは自分の中でも分けて考えているよ。
Q2. 準備をしすぎたのが良くなかったのでは?
そう考えたこともあるよ。でも今は違うと思っているんだ。準備した分は、そのまま自分の理解と教材になって残ったからね。無駄にはなっていないんだよ。ただ「準備すれば人は動く」という期待だけは、間違っていたと思うな。
Q3. 反応がないと分かっていたら、やらなかった?
やったと思うよ。やってみないと分からなかったからね。それに自分で進められた人がいたし、その場で「簡単なんですね」と驚いてくれた声もあったんだ。数は少ないけれど、ゼロではなかったんだよ。
Q4. 会社に不満があるように読めますが?
それはないよ。誰かが悪いという話ではないんだ。みんな自分の仕事で手一杯で、それは当たり前のことだからね。私が学んだのは、人や環境についてではなくて「自分がどこまでを引き受けるか」だったんだ。
【本日のミッション:自分の担当と、相手の担当を分けてみようか】
- ☐ いま誰かのために準備していることを、1つ思い浮かべてみようか
- ☐ そのうち自分にできることと相手にしかできないことを、線で分けてみようか
- ☐ (後輩A君へ)相手の担当の分まで背負っていないか、確かめてみようか。そこは、どれだけ頑張っても届かない場所なんだよ
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