おはよう、後輩A君。
昨日、ちょっと変わったことをしたんだよ。AIへの頼み方を、30通り書いて、全部試したんだ。
思いつきで並べた30通りじゃないよ。私が普段から使っている言い回しなんだ。「これはいつも効いている」と思っていたものばかりだよ。
――でもね。6つ、効かなかったんだ。
そして効かなかった6つには、はっきりした共通点があったんだよ。今日はその話をするね。人に仕事を頼むときの話でもあるんだ。
1. 24は効いて、6は効かなかった
まず結果からだよ。
そのままで効いた 24
効かなかった 6
8割は効いたんだ。悪くない数字だと思うよね。
でも私が驚いたのはそこじゃないんだ。効かなかった6つが、自分では「いちばん自信があったもの」だったことなんだよ。
普段からよく使っていて、うまくいっていると思い込んでいた言い回しなんだ。それが、並べて比べたら効いていなかったんだよね。
2. 効かなかった6つは、こういう頼み方だった
実際に効かなかったものを書くね。
❌「明日の話はしないで」
❌「結果には触れないで」
❌「寂しい感じにして」
どれも、私にははっきり意味が分かるんだ。何を求めているか、日本語として通じているよね。
でも返ってきたものはこうだったよ。
「明日の話はしないで」 → いちばん先に明日の話が出てきた
「結果には触れないで」 → 結果の話で締めくくられた
「寂しい感じにして」 → にぎやかな場面が並んでいた
無視されたわけじゃないと思うんだ。本人なりに従ったつもりなんだよね。ただ、こちらの思っていた線と違うところに線を引いたんだ。
3. 書き方を変えたら、全部効いたんだよ
ここからが本題だよ。私は同じことを、言い方だけ変えてもう一度頼んでみたんだ。
❌「明日の話はしないで」
✅「『明日』『未来』『いつか』という言葉を使わないで」❌「結果には触れないで」
✅「『合格』『結果』『ゴール』『夢』という言葉を使わないで」❌「寂しい感じにして」
✅「『にぎやか』『みんな』『声』という言葉を使わないで」
結果は3つとも一発で通ったよ。1回目でだよ。
内容は何ひとつ変えていないんだ。求めていることは同じなんだよね。変えたのは言い方だけなんだ。
4. 違いは「あとで確かめられるか」だったんだよ
並べて見比べて、やっと分かったんだ。効く頼み方と効かない頼み方の違いは、これだったんだよ。
守れたかどうかを、あとから確かめられる頼み方は効く。
確かめられない頼み方は効かない。
考えてみてほしいんだ。
「『明日』という言葉を使わないで」なら、できあがったものを見れば一目で分かるよね。あるか、ないか。それだけだよ。
でも「明日の話はしないで」だと――どこからが明日の話なのか、決めないといけないんだ。「朝が来る」は明日の話かな。「まだ終わっていない」は? 人によって線を引く場所が違うよね。
⚠️ ここが大事なところなんだよ。私たちが迷うものは、相手も迷うんだ。
相手が悪いんじゃないんだよね。迷う余地のある頼み方をした私が悪いんだよ。
5. これ、人に頼むときも同じなんだよ
ここまで読んで、思い当たることがないかな。
私にはあるんだ。後輩に仕事を頼むときの言葉だよ。
「ちゃんと確認しておいて」
「しっかりチェックして」
「丁寧にやっておいてね」
「いい感じにまとめておいて」
全部、私が言ったことのある言葉だよ。そして全部「あとで確かめられない」頼み方なんだ。
「ちゃんと確認した?」と聞いて「しました」と返ってきたら、それ以上は追えないよね。何をもって「ちゃんと」なのか、二人のあいだで決まっていないからなんだ。
だから、こうなるんだよ。
頼んだ人 → 「ちゃんとやってと言ったのに」
頼まれた人 → 「ちゃんとやったのに」
どちらも嘘をついていないんだ。線の位置が違っただけなんだよね。
6. 言い換えると、こうなるんだよ
同じことを、確かめられる形に言い直すとこうなるよ。
❌「ちゃんと確認しておいて」
✅「この5項目を上から順に見て、チェックを付けて返して」❌「丁寧にまとめて」
✅「1ページに収めて、見出しを3つ立てて」❌「早めにお願い」
✅「木曜の15時までにお願い」❌「気をつけてね」
✅「送る前に、宛先だけもう一度見て」
どれも冷たく見えるかもしれないね。私も最初はそう思ったんだ。
でもね、逆なんだよ。「ちゃんと」のほうが冷たいんだ。
「ちゃんとやって」は、基準を相手に丸投げしているんだよね。そして基準が違ったときに、相手のせいにできてしまうんだ。
「この5項目を見て」は、基準をこちらが引き受けているんだよ。外したときの責任が、頼んだ側に戻ってくるんだ。そのほうがずっと親切なんだよね。
7. ⚠️ 全部を数字にしなくていいんだよ
ただ、行きすぎには気をつけてほしいんだ。
何もかも「5項目」「15時まで」と決めたら、それはそれで窮屈だよね。相手の工夫の余地もなくなるんだ。
私の線引きはこうだよ。
ずれたら困ることだけ、確かめられる形にする。
それ以外は、ざっくりでいい
納期と、外してはいけない一点。この2つだけ具体的にすれば、あとは「いい感じで」で構わないと思うんだ。
一度にひとつだけ変える話でも書いたけれど、全部をきっちりやろうとすると、結局どれも続かないんだよね。
8. 頼んだあとの話でもあるんだよ
もうひとつ気づいたことがあるんだ。
「あとで確かめられる頼み方」をすると、受け取るときも楽になるんだよね。
チェックリストで頼めば、返ってきたものをリストと突き合わせるだけだよ。良し悪しを感覚で判断しなくていいんだ。
これは受け取り方の記事で書いたことと同じなんだ。頼み方と受け取り方は、実は同じものなんだよね。確かめる形を決めるということは、頼む前に受け取り方を決めているということなんだ。
結論:その頼み方、守れたか確かめられる?
今日の話をまとめるとこうだよ。
① 頼み方を30通り試したら、6つ効かなかった
② 効かなかったのは自分がいちばん自信のあった言い回し
③ 違いは「守れたか、あとで確かめられるか」だった
④ 「ちゃんと」「しっかり」「丁寧に」は確かめられない
⑤ 確かめられる形に言い直すと、一発で通る
⑥ 「ちゃんと」は基準を相手に丸投げしているぶん、実は冷たい
⑦ ⚠️ 全部やらなくていい。ずれたら困ることだけ
私はこれを、AI相手の実験で気づいたんだ。でも気づいたのは自分の口ぐせのほうだったよ。
「ちゃんとやっておいて」――何度言っただろうね。言われた側が、どこに線を引けばいいか分からずに固まっていたかもしれないんだ。
後輩A君も、誰かに何か頼むときは――口に出す前に、ひと呼吸だけ置いてみようか。
「この頼み方、守れたかどうか、あとで確かめられる?」
確かめられないなら、確かめられる形に言い直す。それだけで、伝わり方がまるきり変わるんだよ。
よくある質問
Q1. 毎回そんなに細かく言っていたら、面倒じゃないですか?
最初だけだと思うよ。一度チェックリストを作ってしまえば、次からは「あのリストで」で済むんだ。むしろやり直しが減るぶん、全体では早くなるよ。曖昧に頼んで2回やり直すほうが、ずっと時間を使うんだよね。
Q2. 相手を信用していないみたいで、言いにくいです
その気持ち、よく分かるよ。でも逆に受け取られることのほうが多いと思うんだ。基準がはっきりしていると、頼まれた側は「どこまでやれば終わりか」が見えるからね。終わりが見えない仕事がいちばんしんどいんだよ。言い方を「こう決めたから、それだけ見てくれれば大丈夫だよ」にすると、受け取られ方が変わると思うよ。
Q3. 上司から「ちゃんとやって」と言われた側は、どうすればいいですか?
こちらから確かめられる形に変えて、聞き返していいんだ。「ちゃんと、というのは、この3つを見ておけば大丈夫でしょうか?」と聞くんだよ。相手も具体的に考えていないことが多いから、その場で一緒に決められるんだよね。これは失礼じゃなくて、むしろ助かる質問だよ。
Q4. 「いい感じで」と言われる仕事が好きなのですが
それはとてもいいことだと思うよ。今日の話は「全部を細かくしよう」ではないんだ。7章に書いたとおり、ずれたら困ることだけでいいんだよね。任せてもらえる部分が広いのは、信頼されている証拠だよ。その自由は手放さなくていいんだ。
【本日のミッション:口に出す前に、ひと呼吸置こうか】
- ☐ 今日、誰かに何か頼むときに「ちゃんと」「しっかり」を使いそうになったら止まってみようか
- ☐ その言葉を確かめられる形に言い直してみようか
- ☐ (後輩A君へ)逆に自分が曖昧に頼まれたら、その場で聞き返してみようか。線を引くのは、あとよりも先がいいんだよ
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