おはよう、後輩A君。
AIに歌を作ってもらったとき、こんなことがあったんだ。
私が書いた歌詞はこうだよ。
涙は拭かなくていい
「なみだはふかなくていい」と読むよね。ところが返ってきた歌は、こう歌っていたんだ。
なみだは ふくかなくていい
日本語になっていないよね。「拭く(ふく)」と読んで、そのあとの「かなくていい」をくっつけてしまったんだ。
そのときは他の部分が良かったのでそのまま使ったけれど、ずっと気になっていたんだよ。次に同じことが起きたら、どうすればいいんだろうってね。
だから調べてみたんだ。そして――3回予想して、3回とも外したんだよ。今日はその話をするね。
1. まず「法則」を探そうとしたんだよ
私が最初に考えたのはこうだったんだ。
どの漢字が危ないか分かれば、先に避けられる。
危ない漢字の一覧表を作っておけば、歌詞を書くときにチェックできるよね。それができれば一番いいと思ったんだ。
だから同じ歌詞に、あやしそうな言葉をいくつも入れて試すことにしたよ。
拭か 笑わ 聞か 歩か 動か 泣か
どれも似た形をしているよね。漢字のあとに、送り仮名が1文字だけ付いているんだ。
そして書き方だけを変えて10曲作ったんだよ。同じ歌詞で、漢字のまま/空白を入れる/ひらがなにする、の3パターンだね。判定は耳だけに頼らず、できた歌を文字起こしソフトにかけて、入力した歌詞と突き合わせたよ。「そう聞こえる気がする」で終わらせないためだね。
2. 予想①「送り仮名が1文字だと危ない」→ 外れ
結果はこうだったよ。
壊れた 拭か(→ぬか/うか)
壊れなかった 笑わ 聞か 歩か 動か 泣か
――「拭か」だけだったんだ。
同じ形をしているのに、他の5つは全部きちんと歌えていたんだよ。だから「送り仮名が1文字だから危ない」は成り立たないね。
ここで私は考え直したんだ。じゃあ「拭」の何が特別なんだろうってね。
3. 予想②「読みが2つある漢字が危ない」→ 外れ
調べてみたら、こういうことに気づいたんだ。
拭く(ふく)
拭う(ぬぐう)
「拭」には読みが2つあるんだよ。一方で笑う・聞く・歩く・動く・泣くは1つだけだね。
これだ、と思ったんだ。読みが複数ある漢字は、AIが迷うんじゃないかってね。
そこで今度は、読みが2つ以上ある漢字を集めて試したよ。
開か(ひらく/あく) 行か(いく/ゆく) 明け(あける/あかす)
下がら(さがる/くだる) 重ね(かさねる/おもねる)
比べるために、読みが1つの言葉も一緒に入れておいたんだ。走ら・眠ら・探さ、だね。これで差が出れば、法則が決まると思ったよ。
結果はこうだったんだ。
壊れた 開か 行か
壊れなかった 明け 下がら 重ね 走ら 眠ら 探さ
――また外れたよ。
読みが2つあっても、壊れないもののほうが多かったんだ。明け・下がら・重ねは、全部きちんと歌えていたんだよね。
4. 予想③「送り仮名を付けても読みが決まらない語」→ これも外れ
もう一段、細かく考えてみたんだ。
「開かない」は「ひらかない」とも「あかない」とも読めるよね。「行かない」も「いかない」「ゆかない」の両方があるんだ。送り仮名まで込みで、まだ読みが決まらない言葉だよ。
一方「明けない」は「あけない」しかないし、「下がらない」も「さがらない」だけだね。これなら説明がつくと思ったんだ。
――でも、ここで最初の「拭か」に戻ると、崩れるんだよ。
「拭かない」は「ふかない」としか読めないんだ。読みは1つに決まるのに、壊れたんだよね。
つまり、この予想でも説明できないんだ。3回目も外れだよ。
5. 結局、14語のうち3語だけだったんだよ
全部並べるとこうなるんだ。
壊れた(3語)
拭か 開か 行か壊れなかった(11語)
笑わ 聞か 歩か 動か 泣か 明け 下がら 重ね 走ら 眠ら 探さ
なぜその3語なのかは、分からなかったんだ。
もう少し試せば見えてくるのかもしれないよ。100語くらい試せば傾向が出るかもしれない。でも私はそこで手を止めたんだ。
理由は、別のことが分かったからなんだよ。
6. 「見分ける」より「直す」の方が確実だったんだよ
実は同じ検証の中で、直し方も一緒に試していたんだ。同じ歌詞を、書き方だけ変えてね。
そちらの結果がこれだよ。
漢字のまま 「涙は拭かなくていい」 2曲中0曲成功
空白を入れる 「涙は 拭か なくていい」 2曲中2曲成功
ひらがなにする 「なみだは ふかなくていい」 4曲中4曲成功
8曲すべてで、きれいに分かれたんだ。漢字のままだと必ず失敗して、空白かひらがなにすれば必ず成功する。
――ここで気づいたんだよ。
どの字が危ないか分からなくても、まったく困らないんだ。おかしかったら直せばいいんだからね。
私はずっと「間違える場所を先に知る」ことを目指していたんだ。でも本当に必要だったのは「間違いに気づいて直す」ことだけだったんだよ。
7. 予測をあきらめると、やることが決まるんだよ
ここが今日いちばん伝えたいところなんだ。
予測しようとしている間、私がやっていたのは考えることだったんだよね。どの漢字が危ないか、なぜ壊れるのか、法則は何か。ずっと頭の中で考えていたんだ。
でも予測をあきらめた瞬間に、やることが手順になったんだ。
① できた歌を、歌詞を見ながら1回通して聴く
② 引っかかったところに印をつける
③ そこだけ書き方を変えて作り直す
30秒で終わるんだよ。しかも漢字の知識はまったく要らないんだ。
考えることは無限にできるけれど、手順は有限で、終わりがあるんだよね。この違いは大きいと思うんだ。
後輩A君も、AIを使っていて「こういうときに間違えやすい」という感覚を掴もうとすることがあると思うんだ。それ自体は悪くないよ。でも掴めないまま時間だけ過ぎることもあるんだよね。
そういうときは、予測をあきらめて、確認の手順を1つ作る方が早いんだ。
8. おまけ:AIが「詰まった」サイン
検証中に、もうひとつ気づいたことがあるんだ。
読み間違いとは別に、同じ行を何度も繰り返すことがあったんだよ。
夜が明けない 夜が明けない 夜が明けない 夜が明けない 朝でも
歌詞には1回しか書いていないんだ。読みづらいところの近くで、同じ場所をぐるぐる回ってしまったみたいだね。
これ、読み間違いよりずっと気づきやすいんだよ。だから不自然な繰り返しを見つけたら、その前後を疑うといいんだ。
AIが困っているとき、困った顔はしないけれど、動きには出る――これは覚えておくと役に立つと思うよ。
結論:外れた予想も、ちゃんと役に立つんだよ
今日の話をまとめるとこうだよ。
① AIは日本語の漢字を読み間違えることがある
② どの字が危ないかを予測しようとして、3回外した
③ 14語のうち壊れたのは3語。理由は分からなかった
④ でも直し方は8曲すべてで効いた
⑤ 予測をあきらめたら、30秒の手順になった
⑥ AIは詰まると同じところを繰り返す
3回も外して、正直がっかりしたよ。きれいな法則を見つけて、表にまとめて、それを載せるつもりだったからね。
でも今になって思うのは、外れたからこそ「直し方」に目が向いたということなんだ。もし1回目の予想が当たっていたら、私はきっと危ない漢字の一覧表を作って満足していたと思うよ。そしてその表は、たぶん抜けだらけだったんだ。
この前の記事でも書いたけれど、もっともらしい説明ほど、確かめずに信じてしまうんだよね。3回外したことで、私は自分の説明を信じずに済んだんだ。
後輩A君も、何かの法則を掴もうとして上手くいかないときは――それを確かめる手順に置き換えられないか、考えてみようか。分からなくても回る仕組みが作れたら、それでいいんだよ。
よくある質問
Q1. なぜ3語だけ壊れたのか、本当に分からないの?
分からないよ。もっともらしい理由なら3つ思いついたけれど、どれも他の言葉で説明がつかなかったんだ。理由をつけて発表することはできたけれど、それをやると読んだ人が「書いてあるとおりにしたのに直らない」ということになるからね。分からないことは分からないと書くことにしたよ。
Q2. 空白を入れると、歌い方が変わらない?
今回の範囲では、大きな違いはなかったよ。ただし2曲ずつの比較なので、断定はできないんだ。気になるなら、空白ありとなしの両方を作って聴き比べるのが確実だね。
Q3. これはAI全般に言えること?
今回試したのは日本語の歌詞に限った話だよ。だから「AIは全部そうだ」とは言えないんだ。ただ「間違いのパターンを予測するより、確認の手順を持つ方が早い」という部分は、他の場面でも当てはまることが多いと感じているよ。
Q4. 3回も外して、時間の無駄じゃなかった?
そう思う気持ちも分かるよ。でも外れたことで分かったことがあるんだ。「予測できない」という事実そのものが、今回の一番大きな発見だったからね。もし外れていなければ、私は不完全な一覧表を信じたまま使い続けていたと思うよ。
【本日のミッション:予測を、確認の手順に置き換えてみようか】
- ☐ AIに任せている仕事で「たまに変になる」ものを1つ思い浮かべてみようか
- ☐ それを予測しようとしていないか、確かめてみようか(「こういうときに変になる」と考えていたら、それは予測だよ)
- ☐ (後輩A君へ)予測をやめて、30秒で終わる確認の手順に置き換えてみようか。分からなくても回るようになるんだよ
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