【AI活用】「それっぽい」は、動くとは限らないんだよ。AIの出力を人に渡す前に

AI活用

おはよう、後輩A君。

先日、AIで曲を作るときの「言葉の変換辞書」という記事を書いたんだ。ほしい曲のイメージを、AIに通じる言葉へ翻訳するための一覧だね。全部で18通りの組み合わせを並べた、なかなか力の入ったものだよ。

書き上げて、あとは公開ボタンを押すだけ――という段になって、私はふと手が止まったんだよ。

この一覧、全部ちゃんと動くんだろうか。

今日はこの話をするよ。AIと一緒に作ったものを、人に渡す前にやるべきことの話だね。

1. 半分は「それらしく」作られたものだったんだよ

なぜ手が止まったか。理由ははっきりしていたんだ。

その一覧のうち、私が実際に自分で使って、良い曲ができた実績があるものは半分くらいだったんだよね。残りの半分は、AIと相談しながら「こういう組み合わせも良さそうですね」と並べたものだったんだ。

でも並べてしまうと、どれがどれだか見分けがつかないんだよ。実績のあるものも、思いつきで足したものも、まったく同じ顔をして一覧に並んでいる。

そして私は記事にこう書いていたんだ。

「私が実際に使ってきた組み合わせです」

――半分は嘘なんだよね。悪気があったわけじゃない。書いている最中は、自分でもどれが実績でどれが思いつきか、境目が曖昧になっていたんだ。並べた瞬間に、全部が「自分の経験」の顔をしてしまったんだよ。

2. 「試した人が動かなかったら?」の一言で止まったんだよ

私を止めたのは、たった一つの問いだったよ。

これを読んだ人が試して、うまくいかなかったらどうなる?

記事を書いているときの頭は、「良いものを届けたい」でいっぱいなんだよね。たくさん例があった方が親切だし、丁寧に説明した方が喜ばれる。その方向にばかり気が向いてしまう。

でも読む人の立場に立つと、話がひっくり返るんだ。親切なつもりで並べた例が、動かない例だったら――その人は自分のやり方が悪いのかと悩んで、時間を溶かしてしまうよね。

親切のつもりが、いちばんの迷惑になる。書き手が見ている景色と、読み手が見ている景色は違うんだよ。

だから私は、公開を止めて、実際に試すことにしたんだ。

3. 試したら、3つとも動かなかったんだよ

怪しいと思ったものを3つ選んで、実際にやってみたよ。どれも「音の風景」を指定する言葉だったんだ。波の音、レコードのノイズ、蝉の声だね。

結果はこうだったよ。

できあがったものに、その音は入っていなかった。3つとも。

面白いのはここからなんだ。まったくの無駄ではなかったんだよね。「波の音」と指定した曲は、タイトルが「風に舞う塩」になって、絵柄も海になった。雰囲気の方向づけとしては、ちゃんと効いていたんだ。

でも私が読者に約束していたのは「その音が入ります」だったんだよ。半分効いていることは、期待外れを防いでくれないんだ。

もし試さずに公開していたら、こうなっていたはずだよ。読んだ人が貼り付ける。曲ができる。波の音を探して、何度も聴き直す。入っていない。「自分のやり方が悪いのかな」と悩む。――私が奪うところだった時間だね。

4. もっともらしさは、正しさの証拠にならないんだよ

この一件で、私ははっきり分かったことがあるんだ。

AIが出してくるものは、間違っていても、もっともらしい形をしているんだよ。文法も整っているし、それらしい専門用語も並んでいる。見た目では、正しいものと区別がつかないんだ。

これ、人間の失敗とは種類が違うんだよね。人が適当に書いたものは、たいてい雑さが顔に出る。誤字があったり、話が飛んだり、歯切れが悪かったりする。私たちはその「雑さ」を手がかりに、危ないものを察知してきたんだよ。

でもAIの出力には、その手がかりがないんだ。自信満々の完璧な文章で、間違ったことを書いてくる。だから読み返しても気づけない。

つまりこういうことなんだよ。

AIの出力は「読んで判断する」ではふるいにかけられない。

特に危ないのは、手順書・設定値・コマンド・プロンプトの例だね。これらは動かしてみるまで正誤が分からないのに、見た目だけは完璧に整っているんだよ。

5. 全部を確かめなくていい。足した部分だけでいいんだよ

じゃあ全部を検証するのか、というと――それは無理だよね。そんなことをしていたら仕事が進まない。

だから私は、こう線を引くことにしたんだ。

自分の実績があるもの → そのまま出していい
AIと一緒に足したもの → ここだけ確かめる

今回で言えば、確かめるべきは18例のうち半分。そのうち特に怪しい3つを選んで試した。作業としては15分くらいだったよ。

ポイントは、書いている最中に印をつけておくことなんだ。あとから見返すと、どれが実績でどれが思いつきか、自分でも分からなくなるからね。私は今回それで困ったんだよ。

これから私は、原稿を書くときにこうすることにしたよ。

AIと一緒に足した部分には、その場で目印を残す
公開前に、目印のついたところだけを実際に試す。

これなら現実的だよね。全部を疑うのでも、全部を信じるのでもなく、境目を管理する――これが落としどころだと思うんだ。

6. 外れたら、それを書けばいいんだよ

最後にひとつ、うれしい発見も書いておくね。

試して外れたとき、私は最初「まいったな」と思ったんだよ。4例を書き直すことになったし、章もひとつ増える。手間が増えただけに見えたんだ。

でも書き終えて読み返したら、記事が前より良くなっていたんだよね。

こう書けるようになったからなんだ。

「試してみましたが、鳴りませんでした。だからここは、こう書くのが正解です」

――これ、他のどの解説記事にも書いていないことなんだよ。みんな同じような例を、それらしく並べているだけだからね。実際に試して外した人だけが書ける内容なんだ。

だから覚えておいてほしいな。検証は、失敗を減らすためだけの作業じゃないんだよ。他の人が持っていない情報を手に入れる作業でもあるんだ。外れた分だけ、書けることが増えるんだよね。

結論:自分で一度も動かしていないものを、人に渡さないでおこうか

今日の話をまとめるとこうだよ。

① AIと一緒に作ると、実績と思いつきの境目が消える
もっともらしさは、正しさの証拠にならない
③ 危ないのは手順書・設定値・プロンプト例(動かすまで分からないのに見た目は完璧)
④ 全部でなくていい。自分が足した部分だけを確かめる
⑤ そのために書いている最中に目印を残す
⑥ 試して外れたら、それ自体が誰も書いていない情報になる

AIと一緒に仕事をすると、アウトプットの量が一気に増えるよね。私も記事を書く速さがまるで変わったよ。でも量が増えるということは、確かめていないものの量も一緒に増えているということなんだ。

前に「一括処理の落とし穴」の話を書いたときも、結論は同じところに着地したんだよね。速く動く部分をAIに渡したなら、人は止まって確かめる側に回る。役割が変わるだけで、仕事がなくなるわけじゃないんだ。

後輩A君も、AIに作らせた手順書やコマンドを誰かに渡すときは、この一行だけ自分に聞いてみようか。

「これ、自分で一度でも動かしたかい?」

答えがノーなら、渡す前に一度だけ動かしてみよう。15分の確認が、相手の何時間かと、あなたの信頼を守ってくれるんだよ。

よくある質問

Q1. 全部を検証する時間がないときは、どこを優先すればいい?

優先順位は「間違っていたときの被害が大きい順」だね。人が実際に手を動かす手順や、他人に渡すファイルの設定値は真っ先に確かめよう。逆に、考え方や意見の部分は動かしようがないので検証の対象外だよ。「読んだ人がその通りに手を動かすもの」だけを選べば、対象はぐっと減るんだ。

Q2. AIに「これ合ってる?」と聞き返すのではダメですか?

残念だけど、それでは弱いんだよ。AIは自分の出力をもっともらしく正当化してしまうことがあるからね。「合っていますか」と聞けば「合っています」と返ってきやすいんだ。確かめるなら、AIの外で確かめる――実際に動かす、公式の情報を見る、人に聞く。この3つのどれかにしようか。

Q3. 検証した結果、AIが正しかったらムダになりませんか?

ムダにならないよ。「試しました」と書けるようになるからね。同じ内容でも、確かめてから書いた文章は、不思議と迷いがなくなるんだ。読む人にもそれは伝わるんだよね。それに、自分が安心して人に勧められるようになる。これがいちばん大きい収穫かもしれないな。

Q4. そもそもAIに例を作らせるのが良くないのでは?

そうは思わないよ。AIに出してもらう案は、自分ひとりでは思いつかない範囲まで広げてくれるからね。今回だって、私が知らなかった言い回しをいくつも教わったんだ。問題は出させることではなく、確かめずに自分の実績として出すことなんだよ。広げるのはAI、確かめるのは自分――この分担でいいんだと思っているよ。

【本日のミッション:渡す前に、一度だけ動かしてみようか】

  • ☐ AIに作ってもらった手順やコマンドを1つ選んで、実際に動かしてみようか
  • ☐ 原稿を書くとき、AIと一緒に足した部分に目印を残してみようか
  • ☐ (後輩A君へ)「AIが言っていたので」は、渡した瞬間からあなたの責任になるんだよ。だからこそ、一度だけ動かしておこうか

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