測りたいものを、一度にひとつだよ。全部を一つずつじゃないんだ

A君の成長

おはよう、後輩A君。

何かを良くしようとするとき、こんな風にならないかな。

資料が分かりにくいと言われた

・構成を変えよう
・図を足そう
・文字を大きくしよう
・色を減らそう

全部やった

気持ちは分かるんだ。私もそうしていたよ。全部やった方が早いと思っていたからね。

でも最近、やり方を変えたんだ。今日はその話をするね。

――先に言っておくと、「何でも一つずつやろう」という話ではないんだ。そんなことをしたら仕事が止まってしまうからね。分けるべきものと、まとめていいものがあるんだよ。

1. 全部やると、答えが出ないんだよ

4つ変えて、資料が良くなったとするよね。

――どれが効いたんだろう。

分からないよね。だから次に同じことがあったとき、また4つ全部やることになるんだ。毎回フルコースになるんだよね。

逆に、良くならなかった場合はもっと困るんだ。

4つとも効かなかったのか

それとも3つは効いていて、1つが足を引っ張っているのか

これも分からないんだよ。全部やり直すしかないんだよね。

つまりまとめて変えると、何も学べないまま終わるんだ。手は動いているのに、次に使えるものが残らないんだよね。

2. 私が実際にやった失敗

自分の例を書くね。

以前、同じ分野の記事を7本まとめて公開したことがあるんだ。まとめて出せば固まりとして見てもらえるかな、と思ってね。

結果は――全体としては少し伸びたんだよ。

でもどの記事が効いたのか、まったく分からなかったんだ。7本を同じ週に出したからね。

だから次に何を書けばいいかも分からないんだよ。7本ぶんの労力をかけて、学びがゼロだったんだ。

――これはこたえたよ。失敗したのではなく、失敗かどうかも分からない状態だったからね。

3. 「時間がない」から、まとめたくなるんだよね

1つずつやった方がいいのは、たぶん誰でも知っているんだ。

それでもまとめてしまうのは、時間がないからだよね。

1つずつ試したら、4回ぶんの時間がかかる

そんな余裕はない

まとめてやろう

私もこう考えていたよ。1つずつは丁寧だけれど遅いと思っていたんだ。

でも――これ、逆だったんだよ。

4. まとめた方が、結局は遅いんだよ

時間を数えてみると、はっきりするんだ。

まとめてやった場合

4つ変える → 結果を見る → どれが効いたか分からない

次も4つやる → また分からない → 次も4つ…

毎回4つぶんの労力がかかり続けるんだよね。しかもいつまでたっても分からないんだ。

1つずつやった場合

1つ変える → 効いた/効かないが分かる

効いたものは次から最初にやる
効かなかったものはもうやらない

最初の1回は時間がかかるよ。でも2回目以降が軽くなるんだ。

つまりまとめるのは、その場は速いけれど、ずっと速くならないんだよね。1つずつはその場は遅いけれど、だんだん速くなるんだ。

――どこかで追い越すんだよ。数えてみると、こんな感じだね。

1回の作業を「1」として数えてみる

まとめてやる場合
1回目 4  2回目 4  3回目 4  → 合計 12

1つずつやる場合
1回目 4(4つ試す)
2回目 2(効かない2つを外せた)
3回目 1(効くものが分かった) → 合計 7

3回目には差がついているんだよね。しかも1つずつの方は、4回目以降はずっと1のままなんだ。

⚠️ これは私のざっくりした見積もりだよ。実際は毎回きれいに減るわけじゃないからね。ただ方向としてはこうなると思っているんだ。

そして数字より大事なことがあるよ。まとめてやる方は、3回やっても何も分かっていないんだよね。作業量だけの問題じゃないんだ。

5. でも、何でも一つずつは無理だよね

ここまで読んで、こう思った人もいると思うんだ。

「そんなことをしていたら、いつまでも終わらない」

そのとおりだよ。実は私も、全部を一つずつやっているわけではないんだ。

たとえば資料を直すとき、こういうものが混ざっているよね。

誤字を直す
用語をそろえる
・図を足す
・構成を変える

上の2つは直すべきだと分かっていることだよね。効果を測るまでもないんだ。誤字は迷わず直せばいいし、用語のばらつきもそろえた方がいいに決まっているよ。

これらを一つずつやる必要はないんだ。まとめて全部やっていいんだよ。

一方で下の2つは効くかどうか分からないよね。図を足せば分かりやすくなるかもしれないし、かえってごちゃつくかもしれないんだ。

――だから、こう分けるといいと思うんだよ。

直すべきと分かっているもの → まとめて全部やる
効くか分からないもの    → 一度にひとつ

つまり正確に言うと、こうなんだ。

一度にひとつ、ではなくて
測りたいものを、一度にひとつ

⚠️ ここで気をつけたいことがあるんだ。この2つを混ぜてはいけないんだよね。

もし誤字を直すのと同時に構成も変えたら、良くなった理由が分からなくなるんだ。誤字が減ったおかげかもしれないのに、「構成を変えたのが効いた」と思い込んでしまうんだよ。

先に「直すべきもの」を全部片付けてから、測りたいものを一つ入れる――この順番がいいと思うな。

6. 何から変えるか、順番の決め方

とはいえ、4つあったらどれから試すかで迷うよね。私は3つの目安で決めているよ。

① いちばん簡単なものから

意外かもしれないけれど、これがおすすめなんだ。早く1周まわすことに意味があるからね。効果が小さくても、やり方が身につくんだよ。

② 戻せるものから

元に戻せる変更を先にやるんだ。ダメだったときに引き返せるからね。戻せない変更は最後にするよ。

③ 効きそうなものから

急いでいるときはこれだね。ただし「効きそう」は当たらないことが多いんだ。私は最近4つ試して、2つしか当たらなかったよ。だから期待しすぎない方がいいと思うな。

私はふだん①と②を優先しているよ。③は当てにならないと分かったからね。

7. どうしてもまとめたいときは

現実には「今すぐ全部直して」と言われることもあるよね。締切があるときは、選んでいられないんだ。

そういうときはまとめてやっていいと思うよ。ただし1つだけ決めておくんだ。

「これは効果測定をあきらめた」と自覚しておく。

これが大事なんだよね。あとで「あれが効いたんだな」と勝手に思い込まないためなんだ。

私が以前やった7本まとめては、まさにこれだったよ。測るつもりだったのに、測れない形にしてしまったんだ。目的と方法がずれていたんだよね。

急ぐと決めたなら急いでいいんだ。でも急いだのに学べると思ってはいけないんだよ。

8. 仕事での使いどころ

これ、いろんな場面で使えると思うんだ。

会議が長い → 時間を短くする/資料を事前配布する/人数を減らす
問い合わせが多い → 説明を足す/画面を変える/案内を出す
ミスが減らない → チェックを増やす/手順書を作る/担当を変える

どれも全部やりたくなるよね。でも全部やると、なぜ良くなったか分からないんだ。

そして次に別の場所で同じ問題が起きたとき、また全部やることになるんだよね。

――1つずつ試した人だけが、経験を持ち帰れるんだ。

結論:測りたいものを、一度にひとつ

今日の話をまとめるとこうだよ。

① まとめて変えると、どれが効いたか分からない
② 効かなかった場合は、やり直すしかない
③ 「時間がない」からまとめたくなるが、実は逆
④ まとめる=その場は速いがずっと速くならない
⑤ 1つずつ=その場は遅いがだんだん速くなる
⑥ ただし何でも一つずつではない測りたいものだけを一つずつにする
⑦ 順番は簡単なもの・戻せるものから
⑧ 急ぐなら「測るのをあきらめた」と自覚する

私がこれを守るようになったのは、7本まとめて出して何も分からなかったからなんだ。あのときの労力を思うと、今でももったいなかったと思うよ。

でもおかげで学べたとも思っているんだ。皮肉だけれどね。

後輩A君も、何かを良くしようとするときは――まず手を2つに分けてみようか

直すべきと分かっているものは、まとめて片付けていいんだ。迷う必要がないからね。

そして効くか分からないものだけを、一つずつ試すんだよ。

遠回りに見えるけれど、次に何をすればいいかが分かるぶん、結局は早いんだ。そして分ける対象を絞れば、そんなに遠回りでもないんだよね。

よくある質問

Q1. 1つ変えても、効果が小さすぎて分かりません

それもひとつの結果だと思うよ。「この変更だけでは足りない」と分かったということだからね。ただし測る期間が短すぎる可能性もあるんだ。私は最低でも1週間は見るようにしているよ。

Q2. 上司から「全部やって」と言われたら?

やるしかないよね。そのときはやる順番だけ工夫するといいと思うんだ。全部やるにしても、1つずつ間を空けて入れることができれば、多少は切り分けられるからね。同じ日に全部入れるのだけは避けたいな。

Q3. 効いたかどうか、どうやって判断していますか?

先に判定日と基準を決めておくんだ。「1週間後に見て、◯◯が増えていたら効いたと判断する」のようにね。あとから基準を決めると、都合よく解釈してしまうから気をつけているよ。

Q4. 1つずつだと、周りに「遅い」と思われませんか?

思われることはあるよね。だから私は先に伝えておくようにしているんだ。「順番に試して、どれが効くか見ます」と言っておけば、遅いのではなく計画的だと伝わるからね。黙ってやると遅く見えるだけなんだ。

【本日のミッション:変えるのを、ひとつに絞ってみようか】

  • ☐ いま改善したいことを1つ選んで、思いつく手を全部書き出してみようか
  • ☐ そのうちいちばん簡単で、戻せるものを1つ選んでみようか
  • ☐ (後輩A君へ)それだけやって、いつ判定するかを決めてみようか。残りは、そのあとでいいんだよ

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