以前、後輩A君に「必要な保険は掛け捨ての生命保険、火災保険、自動車保険(対人および対物のみ)です」とお伝えしましたが、今回は生命保険について詳しく説明します。
先に結論を言うと、独身で子どもがいないなら、生命保険は不要というのが私の考えです。そして家族がいる場合も、日本の公的保険がかなりの部分を守ってくれるので、足りない分だけを掛け捨ての保険で補えば十分です。なぜそう言えるのか、公的保険のカバー範囲を順番に見ていきましょう。

日本の公的保険は「4つの万が一」を守っている
「万が一」と一口に言っても、実は種類があります。①亡くなったとき(遺族年金)②医療費が高額になったとき(高額療養費制度)③働けなくなったとき(傷病手当金)④障害を負ったとき(障害年金)。この4つを順番に見れば、民間保険で補うべき「すき間」が見えてきます。
① 遺族年金:残された家族の生活費
亡くなった方に生計を維持されていた遺族に支給される年金で、2階建てになっています。
- 遺族基礎年金(国民年金):対象は「子のある配偶者」または「子」(18歳到達年度末まで)。年額831,700円(令和7年度)+子の加算(第1子・第2子は各239,300円、第3子以降は各79,800円)
- 遺族厚生年金(厚生年金):対象は配偶者・子・父母・孫・祖父母など。金額は亡くなった方の収入(報酬比例)で決まります
【支給例】夫(40歳・会社員)が亡くなり、妻(35歳)と子ども(5歳)が残された場合:
- 遺族基礎年金:831,700円+子の加算239,300円 = 約107万円/年
- 遺族厚生年金(平均標準報酬月額30万円・加入20年の例):約30万円/年
- 合計:約137万円/年 = 月およそ11万円
これが子どもの18歳到達年度末まで支給され、その後も妻は遺族厚生年金部分を受け取り続けられます。結構良い金額ですよね。生命保険で備えるべきは「生活費からこの遺族年金を引いた差額」だけ、ということです。
※年金額は毎年度改定されます。最新額は日本年金機構の公式サイトで確認してください。

② 高額療養費制度:医療費には月の上限がある
医療費が高額になっても、1ヶ月の自己負担には所得に応じた上限があります(年収370万〜770万円ならおよそ9万円)。詳しくは医療保険は必要?の記事で解説しています。
③ 傷病手当金:働けない間の給料の代わり
病気やケガ(業務外)で仕事を休んで給与が出ないとき、健康保険から支給される給付金です。
- 金額:1日あたり「直近12ヶ月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 3分の2」。標準報酬月額30万円なら1日約6,700円、月に換算すると約20万円(=給与の約3分の2)です
- 期間:支給開始から通算で最長1年6ヶ月
- 条件:連続3日間を含む4日以上働けないこと、休業中に給与が出ないこと
有給休暇と組み合わせれば、約1年7ヶ月を乗り切ることができます。
※障害年金や労災補償を受けている場合は減額・不支給になることがあります。
※休職中でも社会保険料や住民税の支払いは続きます。
④ 障害年金:障害を負ったときの生活費
障害を負ったときには、障害基礎年金(国民年金)と障害厚生年金(厚生年金・1〜3級)が支給されます。受給には「初診日が年金加入期間中」「保険料をきちんと納めている」「障害等級に該当」の3つの要件があります。
【支給例】会社員の夫(40歳)が障害等級2級になり、専業主婦の妻と子ども(5歳)がいる場合:
- 障害基礎年金:831,700円+子の加算239,300円 = 約107万円/年
- 障害厚生年金:報酬比例 約75万円+配偶者加給 約22万円+子の加算 約24万円 = 約121万円/年
- 合計:約228万円/年
※実際の金額は収入・加入期間・家族構成で変わります。
結論:公的保険でここまでカバーされている
| 保障内容 | 公的保険の制度 | 民間での補完が必要? |
|---|---|---|
| 医療費 | 高額療養費制度 | 原則不要(貯蓄で対応可能) |
| 働けないときの収入 | 傷病手当金 | 長期休職時に備えたい場合のみ |
| 障害を負ったとき | 障害年金 | 補完的に検討しても良い |
| 死亡後の家族の生活費 | 遺族年金 | 配偶者・子ありなら差額を掛け捨てで |
上記を考慮すると、「独身で子どもがいない」場合、生命保険は不要です。万が一の事態に備えて貯金をしておけば十分です。亡くなった際に生活に困る配偶者や子どもがいる場合には、遺族年金でカバーしきれない金額だけを掛け捨ての保険で補うのが適切です。不要な保険や特約をつけないことで安くなった保険料は、後輩A君の満足度を上げたり、将来のための貯蓄や投資に使いましょう。
なお、ここは家族構成や貯金額で判断が分かれるところです。制度の細かい条件は加入状況によって異なるため、最終的には日本年金機構や健康保険組合の公式情報で確認してくださいね。
よくある質問(FAQ)
Q. 独身に生命保険はいらないというのは本当ですか?
私はそう考えています。生命保険は「自分が亡くなって生活に困る人」のためのものなので、扶養する家族がいなければ出番がありません。葬儀代程度は貯金で備えましょう。
Q. 子どもが生まれたら、どんな生命保険に入ればいいですか?
掛け捨ての定期保険で「生活費-遺族年金」の差額を備えるのが、このブログの考え方です。保障が必要な期間(子どもが独立するまで)だけ、必要な金額だけ、が原則です。
Q. 貯蓄型の生命保険(終身保険・変額保険)はダメですか?
保険と貯蓄は分けるのが原則です。「保険でお金が増える」と勧められたときの注意点は変額保険の記事で詳しく解説しています。
Q. 遺族年金は実際いくらもらえますか?
家族構成と収入によりますが、たとえば妻と子ども1人が残された場合の目安は月11万円程度です(本文の支給例参照)。金額は毎年度改定されるので、正確な額は日本年金機構で確認してください。


