後輩A君の未来を見守るブログ(公的保険:生命保険は必要?)

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以前、後輩A君に「必要な保険は掛け捨ての生命保険、火災保険、自動車保険(対人および対物のみ)です。」とお伝えしましたが、今回は生命保険について詳しく説明します。後輩A君に関係する部分を中心にお話ししますので、さらに詳細が知りたい場合は、別途調査してください。

民間の生命保険は必要か?

まず、「民間の生命保険は必要か?」を考えるためには、公的保険のカバー範囲について理解することが重要です。

日本の公的保険制度

遺族年金制度(遺族基礎年金・遺族厚生年金)

遺族基礎年金と遺族厚生年金は、亡くなった方によって生計を維持されていた遺族に支給される年金です。それぞれの特徴や受給要件について以下にまとめます。

遺族基礎年金

受給要件
  • 亡くなった方が以下のいずれかに該当する場合:

    1. 国民年金の被保険者である間に死亡。
    2. 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満で、日本国内に住所がある間に死亡。
    3. 老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡。
    4. 老齢基礎年金を受給していた方が死亡。
  • 保険料納付済期間が加入期間の3分の2以上(一定条件で直近1年間未納がない場合も可)。

受給対象者

子のある配偶者または子(18歳到達年度末までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級)が受給対象者になります。

年金額

基本額は816,000円(令和6年度以降)です。子がいると子どもの加算額(2人目まで234,800円、3人目以降78,300円)が支給されます。

遺族厚生年金

厚生年金保険に基づく制度で、配偶者や子だけでなく、一定条件を満たす父母や孫、祖父母も対象になります。

受給要件
  • 亡くなった方が以下のいずれかに該当する場合:

    1. 厚生年金保険の被保険者期間中に死亡。
    2. 厚生年金保険の被保険者期間中の病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡。
    3. 障害厚生年金(1級・2級)の受給権者が死亡。
    4. 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡(保険料納付済期間25年以上)。
  • 保険料納付済期間が加入期間の3分の2以上。

受給対象者

遺族厚生年金の受給対象には、配偶者・子・父母・孫・祖父母が含まれます。支給の可否は、生計維持関係、年齢、障害の有無などによって決まります。

※自身が老齢厚生年金を受け取っている場合、遺族厚生年金は調整されて減額されることがあります。

遺族基礎年金と遺族厚生年金のまとめ

特徴 遺族基礎年金 遺族厚生年金
対象制度 国民年金 厚生年金
主な対象 子どものいる配偶者・子 配偶者・子・父母・孫・祖父母
年金額 固定額+子どもの加算 報酬比例(亡くなった方の収入による)
優先順位 子どものある配偶者または子 配偶者から順番
例えば、夫(40歳)が死亡し、妻(35歳)と子ども(5歳)がいる場合の遺族基礎年金と遺族厚生年金の支給額の例です。
遺族基礎年金
配偶者と子ども1人が対象になるので、以下のようになります。
基本金額:81万6千円
子ども加算額:23万4千8百円
→合計:105万8百円/年
遺族厚生年金
平均標準報酬月額が30万で、厚生年金加入期間が20年間の場合は以下になります。
29万5千5百円/年
合計金額

134万6千3百円/年なので月額にすると11万2千1百円/月になります。結構良い金額ですね。この金額を子どもが18歳到達年度末まで支給されます。その後は配偶者が遺族厚生年金部分を受け取り続けることができます。

高額療養費制度

医療費が高額になったときでも、自己負担に上限がある制度です。これは「後輩A君の未来を見守るブログ(公的保険:医療保険は必要?)」で解説しているので、省略します。

傷病手当金

傷病手当金は、病気やケガで仕事を休み、給与が受け取れない場合に生活を保障するための健康保険の給付金になります。

受給条件

傷病手当金を受け取るためには、以下の条件を満たす必要があります。

  1. 業務外の事由による病気やケガで療養していること。
  2. 働けない状態であること(労務不能)。
  3. 連続する3日間を含む4日以上働けないこと。
  4. 休業期間中に給与の支払いがないこと。

支給金額の計算方法

例えば、標準報酬月額が30万円の場合:

30万円÷30×2/3=約6,600円

標準報酬月額が12ヵ月未満の場合は、特定の計算方法が適用されます。

支給期間

支給開始日から通算して最長1年6ヵ月間受け取ることが可能です。途中就労で支給が停止された期間は除外されるため、実際に受け取れる期間が延長される場合があります。

まとめ

もし、怪我などで働けなくなった場合でも、ある程度の給付金を受け取ることができます。有給休暇と組み合わせることで、最大で約1年7ヶ月間を乗り切ることが可能です。

※給与や他の手当(障害年金、労災補償など)を受けている場合は、傷病手当金が減額または支給されない可能性があります。

※休職中でも社会保険料や住民税は支払う義務があります

障害年金

障害年金には以下の2種類があります。

  • 障害基礎年金: 国民年金加入者が対象。
  • 障害厚生年金: 厚生年金加入者が対象で、1級から3級まで該当する場合に支給されます

受給要件

障害年金を受け取るためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

  1. 初診日要件: 障害の原因となった病気やケガで初めて医師の診察を受けた日が、国民年金または厚生年金加入期間中であること。
  2. 保険料納付要件: 初診日の前日において、保険料納付済期間と免除期間を合わせた期間が被保険者期間の3分の2以上であること。ただし、直近1年間に未納がなければ要件を満たす場合もあります。
  3. 障害状態該当要件: 障害認定日において、障害等級表で定められた1級または2級(厚生年金の場合は3級も含む)に該当していること。

支給額サンプル

障害年金の支給額は、障害等級や加入している年金制度(基礎年金・厚生年金)、家族構成によって異なります。以下に、夫が40歳で大学卒業後に厚生年金に加入している場合、妻が専業主婦(配偶者加給対象)、子どもが5歳(子の加算対象)のケースのサンプル支給額です。

障害基礎年金(2級の場合)
  • 基本額: 831,700円(令和7年度改定率適用)
  • 子の加算: 第1子 239,300円
  • 合計: 831,700円 + 239,300円 = 1,071,000円
障害厚生年金(2級の場合)

障害厚生年金は報酬比例部分に加え、配偶者加給年金と子の加算が含まれます。

  • 報酬比例部分: 標準報酬月額や加入期間による(例として、平均標準報酬月額が30万円で25年間加入の場合、約750,000円)。
  • 配偶者加給年金: 224,700円
  • 子の加算: 239,300円
  • 合計: 報酬比例部分750,000円 + 配偶者加給224,700円 + 子の加算239,300円 = 1,214,000円
総合計

障害基礎年金と障害厚生年金を合わせた場合:
1,071,000円(基礎年金) + 1,214,000円(厚生年金) = 2,285,000円/年

※実際の支給額は夫の平均標準報酬月額や加入期間によって変動します。
※子の加算は18歳到達年度末まで適用されます。
※年度ごとの改定率により金額が変わる可能性があります。

結論:公的保険でカバーされていること

保障内容 公的保険の制度 民間での補完が必要?
医療費 高額療養費制度 原則不要(貯蓄で対応可能)
働けないときの収入 傷病手当金 長期休職時に備えたい場合
障害を負ったとき 障害年金 補完的に検討しても良い
死亡後の家族の生活費 遺族年金(条件あり) 配偶者・子ありなら必要

上記を考慮すると、「独身で子どもがいない」場合、生命保険は不要です。万が一の事態に備えて貯金をしておけば十分であることがわかります。もし亡くなった際に生活に困窮する配偶者や子どもがいる場合には、公的保険でカバーしきれない金額を掛け捨て保険で補うことが適切であることも理解できます。不要な保険や特約をつけないことで保険料が安くなった分は後輩A君の満足度を上げたり、将来のために貯蓄や投資に使うことにしましょう。

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