医療保険は必要か?
後輩A君は、保険が必要だと考えていますよね。「何かあった時に困らないように」という理由だと思いますが、「何があった時に」「その時にいくら必要なのか」がわからないと、必要な保険を決めることができません。
基本的に、保険は「めったに発生しないが、発生した際に自分が生きていけなくなる」事態に備えるためのものです。したがって、「風邪を引いたら医療費がかかるから保険に入る」という考え方は、「自分が生きていけない」ほどの医療費ではないため、保険に加入する必要がありません。その場合は、貯金で対応すべきと考えてください。この考え方は自動車保険の記事でも同じです。
では「病気やケガで医療費が生きていけないほど高額になること」はあるのでしょうか。ここで登場するのが、日本の公的保険です。

公的保険を理解しよう
まずは公的保険を理解し、それでも足りない部分を民間保険で補うことを考えましょう。公的保険には主に5種類があります。どれも非常に役立つ保険です。
- 健康保険:病気やケガの医療費負担。
- 年金保険:老齢年金、障害年金、遺族年金。国民年金と厚生年金の2種類。
- 介護保険:40歳以上の全国民が対象で、介護費用負担を軽減。
- 労災保険:仕事中や通勤中の事故や災害に対する補償。雇用されている人が対象。
- 雇用保険:失業給付や育児・介護休業中の給付など、雇用の安定と促進が目的。
健康保険:窓口負担は3割
日本は「国民皆保険制度」により、全ての人が何らかの健康保険に加入しています。病院の窓口で支払うのは原則3割。もし健康保険がなければ1万円かかる治療も、3,000円で済みます。75歳以上になると後期高齢者医療制度に手続き不要で切り替わり、負担は原則1割(所得により2〜3割)になります。
高額療養費制度:1ヶ月の医療費には「上限」がある
ここが一番大事なところです。医療費の自己負担が1ヶ月の「自己負担限度額」を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。限度額は所得によって決まり、たとえば年収がおよそ370万〜770万円の人なら、1ヶ月の上限はおよそ9万円(80,100円+医療費に応じた加算)です。つまり、どんなに大きな手術や入院をしても、1ヶ月の医療費負担はこの程度で収まるということです。さらに直近12ヶ月で3回以上該当すると、4回目からは上限がもっと下がります(多数回該当)。
注意点は3つあります。
- 差額ベッド代(個室代)や入院中の食事代、通院の交通費は対象外
- 公的保険がきかない「先進医療」の技術料や自由診療も対象外
- 制度の上限額は2026年8月から段階的に見直しが予定されています。最新の金額は厚生労働省や加入している健康保険の公式情報で確認してください
会社員はさらに手厚い:付加給付
会社の健康保険組合によっては、高額療養費制度よりさらに低い上限を設定している「付加給付」という制度があります。後輩A君の健康保険組合の場合、1ヶ月の医療費の自己負担は最大2万円で済みます。自分の健康保険組合に付加給付があるか、一度調べてみる価値は大アリです。
医療費控除:確定申告で税金も軽くなる
保険ではありませんが、1年間の医療費が10万円(所得により異なる)を超えた分は、確定申告で所得から控除でき、所得税が軽減されます。通院の交通費や市販薬の購入費も対象になるので、医療費がかさみそうな年は領収書を保管しておきましょう。

結論:医療保険は「貯金」で備えるのが私の考えです
ここまでを整理すると、健康保険(3割負担)→高額療養費制度(月約9万円の上限)→付加給付(A君なら月2万円)と、日本の公的保険は何重にも守ってくれています。だから私は、民間の医療保険には入らず、医療費は貯金で備えるという考え方です。月2万円×1年分=24万円程度の貯金があれば、ほとんどのケースに対応できます。医療保険を解約して浮いたお金は、後輩A君の満足度アップや、将来のための貯蓄・投資に回しましょう。
がん保険についても同じ考えです。「先進医療のためにがん保険が必要」と言う人がいますが、日本のがん治療は、科学的根拠に基づいて現時点で最良とされる「標準治療」が公的保険で受けられます。標準治療は「並の治療」という意味ではありません。
なお、ここは考え方が分かれるところです。貯金がまだ十分でない人、自営業などで付加給付がない人は、自分の家計に合わせて判断してください。制度の細かい条件は加入している健康保険によって異なるため、最終的には公式情報で確認してくださいね。
よくある質問(FAQ)
Q. 医療保険はいらないというのは本当ですか?
このブログの考えは「貯金で備えられるなら不要」です。理由は、高額療養費制度で1ヶ月の医療費に上限(年収370万〜770万円ならおよそ9万円)があり、会社員なら付加給付でさらに低くなることも多いからです。ただし貯金がまだ少ない人は、貯まるまでのつなぎとして保険を使う考え方もあります。
Q. 高額療養費制度があれば医療保険は不要ですか?
医療費そのものについてはかなりの部分をカバーできます。ただし差額ベッド代・食事代・先進医療の技術料などは対象外なので、その分は貯金で備えましょう。また、上限額は2026年8月から段階的に見直しが予定されているので、最新情報の確認は必要です。
Q. がん保険も不要ですか?
私は不要と考えています。がんの標準治療(手術・薬物療法・放射線治療)は公的保険の対象で、高額療養費制度も使えるからです。標準治療は現時点で最良とされる治療のことです。
Q. 貯金はいくらあれば安心ですか?
まず医療費用として20〜30万円を目安にしましょう。付加給付が月2万円の会社員なら、1年間医療費を払い続けても24万円程度だからです。生活費の予備費とは別に確保しておくと安心です。

